塔の上のとりかご

エホバの証人の2世として育ち、離れました

エホバの証人の教理や組織について

エホバの証人って何を教えてるの?どんな人たち?

と、疑問な方も多いと思うので、まとめてみたいと思います。

 

 ●エホバの証人の教理概要

エホバの証人は、神の言葉である聖書を唯一かつ絶対の教典とし、聖書の教えに忠実に生きようとするグループです。

1870年代、アメリカでチャールズ・テイズ・ラッセルが創設しました。

 

「エホバ」は神の名の呼び方のひとつ。英語では「jehovah(ジェホーバ)」。他にヤハウェと呼ばれることも多いです。

ちなみに、エホバの証人がよくJWと略されるのは、英語表記のjehovah's witnessesの略です。

 

なぜ呼び方に相違が出るかというと、聖書の原典のヘブライ語の記載は母音を省略する書き方(yhwh、またはjhwhに相当)で、実際に当時何と読まれていたかはっきりしないから。

日本語でも、文献の漢字の読みに二通りの説があること、ありますよね。

 

神エホバが最初に創造したのはイエス・キリストでした。それからイエスの助けを借りてみ使い(天使)たちを作り、宇宙を作り、地球を作り、最後に人間を創造しました。

神が1人で創ったのはイエスだけなので、イエスは神の1人息子です。イエスは三位一体の神ではありません。

 

ある時、み使いの中でも極めて有能だったサタンは、自惚れて反旗を翻し、人間をそそのかしました。人間は禁断の実を食べることにより、事実上神の支配を拒絶しました。

神の支配がなくても、うまくやっていけるのか?やれるもんならやってみなさい。

そうして悪魔となったサタンの影響下で、楽園を追われた人間は生活を初めました。

 

神から離れてうまくやるのは無理だと悟る善人たちを導き、最初の人間アダムが失った完全な命を取り戻すため、神は地上にイエス・キリストを遣わされました。

エスは処刑されることにより、アダムの罪の贖いとなり、人間に完全な命を取り戻すチャンスを開きました。以降の善人は、イエスの共同統治者となるべく、死後天に召されることになりました。

ただし、その人数は決まっています。14万4千人。

その数があらかた召され、イエス・キリストが王として即位したのが1914年。第一次世界対戦勃発の年です。戦争が起きて世界が荒れ始めたのは、いよいよ劣勢になったサタンがやけくそになって暴れだしたから。

 

14万4千人が満ちた後、今度はその国民となる、地上の楽園で生きる者たちが集められることになりました。この者たちは、ハルマゲドンで悪人が一掃された後生き残り、永遠の命を得ます。ハルマゲドンまでに亡くなった善人は、神の再創造により生き返ります。

現代、その善人と呼べるのは、聖書に忠実に従うエホバの証人だけです。一般のキリスト教は異教と交わり、戦争を行い、金銭や道徳面で腐敗し、サタンに操られています。

エホバの証人は戦争に加わらず、異教の教えも注意深く拒絶します。不道徳や血を避け、清さを保ちます。金銭的にも清廉潔白です。

エホバは統治体と呼ばれる、本部の中央組織を通して、エホバの証人を導いています。

 

……というのが、主な教理です。

 

エホバの証人として最も重要なのは、上記の「真理」を世界中に宣伝することです。

信者全員が伝道者。伝道活動をしない者は、信者として認められません。

信者は毎月、伝道活動に費やした時間や配布物の数を報告します。この報告がないと、「不活発」として指導が入ります。

伝道活動は信仰の証明です。これに熱心なほど、組織内で重用されます。

 

エホバの証人の組織形態

まずアメリカに本部があり、ここに神の啓示を受ける統治体(十数名からなる組織)がいます。

そして、世界各地に支部があります。日本支部は神奈川県海老名市にあります。日本各地は、【地域】>【巡回区】>【会衆】に分類され、それぞれに[地域監督]、[巡回監督]、[長老]がいます。この【会衆】単位で、週に数回、集会を行います。(以前は3回でしたが、今は2回のようです)【会衆】は、さらに【群れ】に分けられます。この【群れ】ごとに伝道活動が組織されます。

会衆には世話役として[長老]が1~4名ほどおり、補佐として[奉仕の僕]が数名います。全員男性です。ステージから講話ができるのも、男性のみです。

 

他に、伝道活動に打ち込む順に、【宣教者】>【特別開拓者】>【正規開拓者】>【補助開拓者】という資格があります。これは女性でもなれます。

【宣教者】と【特別開拓者】は巡回監督の推薦を経て組織から任命され、金銭的援助を得て、一般の仕事をすることなく伝道活動に専念できます。宣教者は外国に行きます。

【正規開拓者】【補助開拓者】は、素行が悪くなければ誰でもなれます。【正規開拓者】は月70時間(20年前は年1000時間)、【補助開拓者】は月50時間(20年前は60時間)を伝道に費やします。(今はまた変わってるかも)

多くの未信者が滅びるかどうかの瀬戸際に、学業や仕事にかまけてる暇はない!この世で地位を得ても意味ないし!と、進学やフルタイムの仕事を犠牲にする人が多いです。なので、大学生や正社員は少ないです。

 

活動資金は、全て寄付で賄われます。金額の規定などはありません。資金が不足しているときは、集会で状況を伝え、「皆様の温かいご寄付に感謝します」と、「トイレをきれいに使用してくださりありがとうございます」方式の催促がされます。

 

「王国会館」と呼ばれる集会所は、建設プロジェクトにより安価に建設されます。速成建設の手順が確立されており、なんといっても人件費無料です。ボランティアがわんさか来ます。

建設奉仕に参加すると、正規開拓者に考慮時間が加算されます。無償で働いた分、伝道活動を減らせるわけです。食事も3食提供され、民泊で宿泊無料です。タダで技術も学べます。うまいwinwinシステムです。

 

印刷所も独自のものを持っており、出版物は自前です。ほぼ全ての作業を信者が行います。印刷工場は支部内にあり、ベテルと呼ばれ、そこで働くベテル奉仕は超エリートなので皆の憧れです。

 

エホバの証人の信者

エホバ証人になるには、

①書籍の質疑応答で行われる聖書研究(基本的にマンツーマン。無料)により知識を得る

②集会に出席

③王国宣教学校に入学(集会内で行われる伝道教育。テクニック指導、実演発表などがある)

④伝道活動に参加し、伝道者となる

⑤教えを理解しているか、長老との面接試験

バプテスマ(浸礼儀式)を受ける

という段階を踏みます。

 

信者になった時点でかなりの審査を潜り抜けているので、信者というだけで、初対面でもお互いを信用します。

信者同士は真の愛で結ばれており、お互いを「兄弟」「姉妹」と呼んで、温かな人間関係を築くことができます。

……でもまあ、やっぱり色々あるみたいです(^_^;)

そこは大体、「人間は不完全」で流されます。

 

信者は、世の中の一般的な地位には無頓着で、自分たちは神に選ばれた民だという誇りがあります。神の国民なので、他の政治には参加しません。

 

信者でない人たちは、「真理を知らない可哀想な人たち」だという認識です。

一人でも多く救いたいと、親切心で歓迎されない訪問を繰り返します。「教えてあげないと、知らないまま滅びてしまう」とか、「ちゃんと聞いて学べば、絶対に納得するはず」とか思っています。

「真理を知ったのに」離れた信者には冷淡です。大罪を犯すと「排斥」という除籍措置の上、徹底無視の制裁が加えられます。無視に耐え、しおらしく集会に長期間通い続けることで、許されることもあります。自分から離れると宣言する「断絶」も同じ扱いです。

 

主な禁止行為は、

・婚外の性行為(自慰もダメ)

・ポルノ(エロコンテンツ見たらダメ)

・タバコ、麻薬、泥酔

・輸血、血を含んだものを食べる

・同性愛(欲求があっても表に出さない)

偶像崇拝(十字架、国歌、過度なアイドル推しなども)

・異教行為(墓参り等は無論、クリスマスや誕生日なども)

・政治活動(選挙の投票も)

・戦闘(格闘系スポーツ含む)

・命を粗末にする行為(堕胎、自殺行為、バンジージャンプなど)

・オカルト(魔法や霊の出る作品含む)

・背教(教理に異論を唱える、そういう本を読む)

などです。

これらをやった上悔い改めないと、審理委員会にかけられて排斥になります。

 

教義は時代によって変化することもありますが、それは「その時代には理解できないので便宜上そう教えられたが、状況が整ったのでレベルアップした」という理解です。

「間違ってた、ごめん」ではなく、「更に高い場所に導かれました!」みたいなアプローチ。

 

その最たるものはハルマゲドンの時期で、「1914年に来る!」→「1975年に来る!」→「世代が過ぎ去る前=1914年を覚えている人がいなくなる前に来る!」→「1914年までに生まれた人がいなくなる前に来る!」→「世代というくくりは後から見ないとわからない」→「時期は神にしかわからない」……のように、変化してきました。

 

多くの2世がトラウマとなっている、懲らしめの鞭棒(四つん這いでお尻を出し、叩かれる体罰)も、現在は使用されていないようです。

 

エホバの証人は男女の区別をはっきりつけています。端的に言うと男尊女卑。女性は男性を補う役割しかありません。理由は「そのように創られているから」。アダムに禁断の実を食べさせたエバ(イブ)を筆頭に、女性がでしゃばるとろくなことがないのです。男に従ってこそ幸せなのです。

会衆を教え指導するのは男性の仕事。家庭でも「頭の権」は夫にあり、妻は服従します。

同性愛者は許容されません。神の創った自然の状態に反するからです。

性に応じた慎みのある服装をしなければならず、女性はスカートが基本です。膝上丈はNGです。

……だいぶ時代錯誤な価値観ですが、今でもブレてないのかなぁ。

 

エホバの証人が祝う記念日は、イエス・キリストの死の記念日(ニサン14日。春分頃の満月の日)です。贖いにより罪から解放されたからです。静かに記念式を行います。

それ以外はほとんど祝いません。世間で祝われるものは異教由来とされてNGなものがほとんどです。誕生日、正月、節分、バレンタイン、雛祭り、ホワイトデー、イースター子供の日、母の日、父の日、七夕、ハロウィン、クリスマス……

差し支えないのは結婚記念日や入学進級卒業祝いくらいかな。

 

なので、学生生活ではめちゃくちゃ浮きます。

幼稚園なんてそんなのばかりですから、幼稚園に行かせない選択をする親も多いです。

同年代との集団生活未経験でいきなり小学校。

2世の試練は果てしないです。

 

未信者はあくまで教育対象で、交友は推奨されていません。関わるなら真理を伝えなさいというわけです。

一緒にできないイベントも多く、偏見の目もあり、集会に予習に伝道にと忙しいので、組織外で友達を作るのが難しいです。

結果、組織内で密な人間関係が出来上がり、エホバの証人を辞めたら頼る人がいないという状況になりがちです。そこに反したら無視という制裁が控えているため、非常に抜けにくいです。

 

でも心から信じて伝道が苦ではなく、清廉潔白な価値観が心地よい人にとっては、パラダイスです。

死んでも復活して永遠の命。死の恐怖からも解放されます。

言われることさえやれば、どんどん褒められます。笑顔と善意に囲まれます。どこに行ってもその地区の会衆があり、助けてくれる友達がいます。

その場で報われなくても、神は見ていてくださいます。必ずいつか報われます。

その心の安定は、宗教にしかなし得ない、偉大なものだと思います。

 

以上が、エホバの証人の概要です。