離れるまでの経緯・6
集会に行かなくなった後、わたしは本格的にフルタイムの仕事に転職しました。
が、これが結構なブラック企業で、逃げ出したい、でも事務の仕事は求人倍率すごくて苦労したから、何か資格を取って別の仕事の道も探したい、と思っていました。
このブラック企業に我慢も限界!となったタイミングで、定年退職した父が、退職金の一部を生前贈与すると言い出しました。
あ、ありがたい……資格取得の資金になる!
わたしは仕事をやめ、東京で一年間資格の勉強をすることにしました。
一年後資格がとれたら、故郷に戻る予定でした。
その頃、ネット上で仲良くしている男性がいました。
3歳年下で、Dさんといいます。
恋愛的な期待をにおわせずに接してくれて、近づいても勘違いしない安心感がありました。
mixiでできたサークル内で、彼は筋肉系下ネタキャラ、わたしは清純キャラと一見正反対でしたが、不思議とうまが合いました。
彼に対しては頼りになる兄かつ世話の焼ける弟の感覚で、わたしは彼に好きな人ができる度に相談に乗ったり応援したりしていました。
「綾さんはなんで恋愛しないの?」
「実は宗教やってて、宗教外の人との恋愛が許されないんだ。でも本当はやめたいから、宗教内の人とも恋愛したくなくて」
そんな、他には話せなかった、踏み込んだ会話もしていました。
Dさんは、東京に住んでいました。
わたしが東京に出ることになったとき、家を探す相談に乗り、何かと手伝ってくれました。
2009年10月、東京に引っ越しました。
派遣の仕事をしながら、資格の勉強をしました。
東京近郊には、10年近くのネット交流でできた友達がたくさんいて、実家の縛りもなくなり、人生初の心置きなく遊べる自由を満喫しました。
特に、率先して企画してくれるDさんとはよく遊びました。
飲み会、バーベキュー、たこ焼きパーティー、カラオケ、クリスマス、初詣、鍋パーティー、誕生日、お花見……
楽しくて楽しくて、夢のようでした。
Dさんとは、みんなで行こうぜ!から、二人で行こう、になり、クリスマスの食事に誘われ、「君ら付き合ってるの?」みたいな状態になっていましたが、お互い煮え切らないまま、春を迎えました。
Dさんにはとても懐いている妹分がおり、その子が好きオーラを放っているのに、Dさんは無頓着に構っていました。
Dさんの部屋に押し掛けて、Dさんのベッドで昼寝したり。やれやれ仕方ないなと嬉しそうなDさん。
わたしは、Dさんが幸せならいいと思っていたので、Dさん、その子とお付き合いするつもりなら、わたしと二人で会うのはやめましょう、と、手を離そうとしました。
(思い返せば、自分の幸せを大事にしようと決意した割に、まだまだ無頓着でしたね……)
Dさんは大慌てで、告白してきました。
友人付き合いを始めて5年で、気心も知れていましたから、気持ちが通じれば早かったです。
4月に付き合い始め、5月にプロポーズされました。
まあ、年齢的にもわたしは34でしたし、婚前交渉がダメだと伝えてあったのも大きかったかも。
さて、ここで重要なのは、
エホバの証人の未信者との結婚は非推奨だが、罪ではない
ということです。
祝福はされませんが、排斥対象ではありません。罪は、婚外の性交渉であって、正式な結婚は不道徳ではないのです。
世との交わりは罪を誘発するから避けるべきなのであって、それ自体は禁止されていません。
そして、徹底した男尊女卑があり、「頭の権」を重んじるエホバの証人。神の命令に背く内容でない限りは、夫の決定が絶対です。
つまり、組織から距離を置いてフェードアウトしたい人、特に2世の女性にとっては、未信者との結婚は最高の手段です。
管理権が親から夫に移り(←エホバの証人的見地から見て)、宗教的に手を出しにくい位置に行きながら、信者家族との交流を保てます。子供ができれば、親も孫可愛さに態度が軟化しますしね。
わたしはDさんのおかげで、最高の脱出への道を手に入れたのでした。
そしてそこに至れたのは、未信者として家の中で孤立したまま頑張り、退職金を分けてくれて東京行きに賛成してくれた父のおかげなので、父にも感謝しています。